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2008年4月 4日 (金)

地球交響曲第3番と星野道夫

 「地球交響曲(ガイアシンフォニー)」という映画がある。私は、龍村仁監督のライフワークという感じのこの映画を、製作されるたびに見て来た。最近、この映画がDVDになっているのを知り、もう一度見返す機会を得た。

 97年に公開された第3番は、星野道夫、フリーマン・ダイソン、ジョージ・ダイソン、ナイノア・トンプソンという出演者で構成されている。この顔ぶれについて、私はその時はよく知らずに映画を見た。星野さんは、それ以前、友達に誘われて写真展を見に行ったことがあった。その写真展は、デパートの催し物会場みたいなところで開かれていて、人がごったがえしていたので、人気があるんだーと初めて知った。その写真には、アラスカの広大な自然やいきいきとした動物たちが収められていた。その中には、たぶん足下に見つけた小さな植物の写真もあった。雪に透けた色とりどりの葉っぱのポストカードを買って帰った覚えがある。

 この映画を見る時になって、彼が亡くなったことを知ったような気がする。しかも亡くなったのは、映画の撮影の直前。だから彼は出て来ないと。映画は、ほとんど彼の友人たちが彼について話している場面が占めていた。でも、私はその人たちの事をよく知らなかったので、「みんなから慕われていたんだなー」くらいの感想しか持たなかった。

 その後、私は結婚して引っ越した場所のせいか、登山にはまりアウトドアに興味を持ち始めた。それで、星野道夫さんの本を読むようになった。何ヶ月か前、ふと読むものが無くて、以前一度読んだ星野さんの「旅をする木」を手に取った。この本は、アラスカの自然と、星野さんの愛するアラスカへの思い、そこで出会った人々との心の交流などが、優しく澄んだ文章で綴られている。読んでると彼がアラスカで過ごした濃密な時間を、一緒に体験しているような気がしてくる。一緒にいて、行ったこともないその場所の空気や風を感じることができる。そして、あまりにもまっすぐなその文章に、何だか胸が詰まって来る。

 今回、映画を見返してみたら、その「旅をする木」の登場人物たちが、勢ぞろいしているじゃないか!!ブッシュ・パイロットのドン・ロス、シリア・ハンター、ボブ・サムなどなど。しかも、その人たちが一同に会し追悼会が行われる。本を読んでいるときは、もちろん本当に星野さんが体験したことをエッセイとして書いているのはわかっているけど、ひとつの物語として読んでいるので、何だか「この人たちが本当に存在しているんだ!」と不思議な感じがした。

 その一人一人が、今度はその本人の立場から星野さんのことを語っている。星野さんがその人たちを思っていたように、彼らも星野さんを愛していたのが感じられる。みんながまだ、彼が亡くなったことを完全には、受け入れることができていないのか、途中涙で言葉を詰まらせながら話していた。私も何だか、その人たちと一緒に泣いてしまった。彼はいなくなってしまったけど、みんなが彼の魂の存在をありありと感じ、ちゃんと送り出さなければならないと思っている。残された者の悲しみを背負いながら。

 以前、この映画を見たときは、私にはちゃんと見る準備ができていなかったんだろう。家族ができたり、自然の恩恵を知ったりした今だからこそ、この映画の見えない部分が見えたような気がした。今になって、ボブの祈りの声に、何かを感じた。
 
 ボブもそうだけど、ナイノアにしても一度文明による文化的虐待を経て、新たに自分たちのルーツに目覚め、それをきちんと継承して行こうという運動を始めている。そういうことって、本当に大事なことなんだと最近思う。そういう祖先とのつながりや、自然とのつながりが断ち切られているところから、どうしようもない漂流感のようなものが生まれているような気がする。自分自身、生まれ故郷を離れて都会に住んで、時々感じた感覚。先住民の人たちには、まだ古老のような人たちがいて、判断を仰いだりしていることに、うらやましさを感じる。

 この映画について龍村監督自身が「地球交響曲第三番 魂の旅」という本を書いている。監督が星野さんの急逝を知ったところから始まる、まさに魂の旅の記録。この映画が、実は様々なシンクロニシティに彩られていることがわかる。関わったすべてのことが、つながっている。星野さんの魂が、そう導いたのか、それとも始めからこの映画が作られることが決まっていたのか?なんだか、星野さんがアラスカに惹かれた時点からもう始まっていたような気がしてくる。これはもう、ただの映画ではない何かになっている。

 こういう、自然とのつながり、祖先とのつながり、遠い過去から積み上げられて来た叡智への尊敬の念を、忘れては人間は、生きていけないのかも知れない。そういうことを、ないがしろにしによう生きていきたいな、と思う今日このごろ…。

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